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幽霊話そのに

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「…で?解毒剤を飲んでからあまりのまずさに意識が遠くなって、気がついたらここにいた?」
『そう。』
うむうむとうなずく俺は相変わらず空中にふよふよ浮いている。ちょっとおもしれー視界だ。
怪盗KIDはといえば、最初に俺を見たときのショックからは立ち直ったようだが、多少顔が引きつっているかもしれない。こんなに余裕のない顔ははじめて見た。
「てゆーかさ、なんで名探偵そんな落ち着いてるわけ?」
疲れたようにKIDが聞くから『なんとなくだ!』と答えたら更に脱力された。
そりゃー俺だって訳わかんねーけど、俺の適応力には定評がある。なにせコナンになったときだってその適応力のおかげで蘭の家に転がり込めたんだし。
まあさすがに幽体になってここに浮かんでたときはびっくりしたけどさ…。
『だってしょうがねーじゃん?』
俺がそう言って笑うとあいつはハッとしたようになって「…ごめん」て呟いた。まあこいつもショックだろうな。今まで少なからず関わり合いのあった相手がいきなり幽霊になって現れたら、普通は信じられないだろう。こいつも人の子ってことだ。
「名探偵…成仏しちゃうの?」
おいお前さっきからKIDの口調が崩れてるぞ。
『さあー。わかんね』
「……………………」
『いくら俺だって幽霊は初体験だし』
「……まあ、そうだよな……」
こいつは一応納得したみたいだった。
『ただあいつらのこととか気になるし、いっぺん家に帰ろうかなってさ』
「名探て…」
『そんな顔しなくっても家に帰ったくらいで成仏するかよ!』
置いてかれる犬みたいな目すんなよな!反則だぞ反則!
『まあ幽霊になって初めに会ったのお前だし。なんか縁があるんじゃねぇ?成仏しちまう前に挨拶にでも行くって』
幽霊に慰められてるKIDの図っていうのもなかなか珍しい。てか、普通はないはずだ。
「…う〜こんなことならもっと早く、お前に会いにいっときゃよかった」
はあ、と切なそうにため息混じりで呟かれると、こっちとしては、なんで?とか聞き返せない雰囲気だ。
いやむしろ。
『俺は会いたくないね』
「え…」
だからそんな顔すんなって!!
『お前に会うとしたら現場で直接か、もしくはお前の正体をつきとめて、俺が会いに行くとき−なんだからな!』
にい、と笑ってそう告げるとあいつは初めて笑った。
「ははっ…名探偵らしいや…」
あったりめーだ。
それに、俺には自分が死んでるって感覚がしない。頭ではそうわかってるつもりなんだけど。ポルターガイストとかそんなんで捜査に参加できないのかなーなんて。
…これは未練があるってことなのかどうなのか。
「KIDがいたぞ!追え〜!!」
どうやら中森警部が追いついてきたらしい。俺たちはもう一度顔を見合わせて笑い、あいつはハングライダーで地を蹴った。




*****





『じゃあな〜!!』
なんて言って名探偵(※幽霊)は俺が飛び立つときにふわりと笑って消えてしまった。
さすが幽霊。なんて感心している場合ではない。
どうやら彼は俺の幻覚ではないようだ。いや、夢だったらいいのに。だって、
幽霊の工藤新一。それが意味することろはただ一つ。
「もしかしなくても、名探偵…死んじゃったのか?」
少なくともこっちのほうは好敵手と認めた存在だった。
それが死んでしまっただなんて、…信じたくない。
けれど現実的な思考回路は幽霊=死という事実を突きつけていた。
「くそ…っ」
もっと前に会いに行けばよかったともらした時の困ったような名探偵の顔を思い出す。
今まで対立してきたときはこちらを鋭くにらみつける顔や、驚いた顔、悔しそうな顔ばかり。
中でも一番惹かれていたのは強気の、緊張が伝わってくるような不適な笑みだったのだけれど、今日の幽霊名探偵は友達にするみたいに普通の笑顔を見せてくれた。それで、余計にそんな風に思ったのかもしれない。
「名探偵…」
彼の死が表立っていないのはなぜだろう?
幽霊としてさきほどそこに現れたばかりだという工藤新一。時間軸が同じだとするなら…彼が解毒剤を飲んだのは今日ということだ。
それでは今はまだ蘇生に手を尽くしていた灰原や阿笠博士が家で悲しんでいるところかもしれない。そんなところに、俺が闖入していいはずがなかった。幽霊に会ったことなんて、彼が死んでしまったことを確実にするものでしかない。
後日ひっそりと行われるだろう告別式。そこにそっと参列して、信じてくれないかもしれないけれど、幽霊にあったことを語ろう。

そこまで現実的に考えてきたKIDの思考は、突然こみ上げてきた強い衝動によってさえぎられた。
「なんでッ…死んじゃったんだよ…名探偵…」
俺に勇気があれば、もう少し早くに会いにいけたのに。
怪盗KIDが流した涙は彼を守護する月だけが見守っていた。








to be continued...



(07/05/01)
続きはまたま考え中です。
ひたすらあかるい探偵と、突然落ち込む KIDさん。くらい・・・(当たり前)