※ヘンリー×クリスで、かつ薔薇戦争が終わった直後と思ってください。
苦手な方はブラウザバック、お願いします!
カードの名前や効果なんかは全て妄想と捏造による都合の良い設定ですので『そんな効果ねえよ!』と怒らないで読み飛ばしてやってください。
前提として薔薇戦争で十字団の長だったクリスを手に入れるために、ヘンリーと王の一騎打ちがあったと思いねえ。










↓それでもOKですか?











--------------------------------

『喪失 -Ressurection-』

--------------------------------





その台地には以前にも訪れたことがあった。忘れもしない、青眼白龍を呼び出す儀式を行った聖地だ。そして、その直後にヘンリーにも出会った・・・。
クリスは頭を振って過去の記憶を振り払った。心臓の痛みは今のところ大したものではない。ただそこにいるということを忘れさせないかのように時折うずいて主張するだけだ。
あの男のようだ、とクリスは思った。心を殺し、青眼のカードを手に入れるために侍った王のように、戦いが終わった今となってもまだクリスを支配し続けている。逃がさない、許さないとばかりに胸を貫いてくる。
ヘンリーに抱かれた痛みもあるものの、そちらよりもこの心臓の痛みはもっと怖ろしげなものだった。気を抜けばすぐに、そうでなくてもきっと時間をかけてクリスを殺す。王が最後にはなった呪いのカードはこれまでの例がないほど強力で、絶対だった。ヘンリーをはじめとするチューダー側の人間は王の呪いを甘く見ていた。外側から見た限りでは呪いは効力を発していないが、体の内から呪いは徐々にクリスを侵食し、苦しめ、ついには死に至らしめるだろう。そういう呪いなのだと、クリスにはわかっていた。わかっていたのだ。
それを留めているのはひとえにクリスにはやり遂げたいことがあったからだ。本当ならもう継続する痛みに音を上げてしまいたいところだが、これだけは譲れなかった。
だから痛む身体を引きずってクリスは台地に立つ。すぐさま、簡単な模様を描いて中心に立つと三枚のカードを取り出した。そのうちの一枚の効果を読み上げ、もう一枚を掲げる。
「青眼・・・」
そう呟くとカードから光が溢れ、美しい青眼白龍が召喚される。クリスがその生涯をかけて求めた最強の龍が。彼らのつながりは青眼の方でもクリスを唯一の主と認めたという点で誰にも裂けないほど強く深かった。だからこそヘンリーも、使えない青眼のカードをクリスに渡したのだ。
だがクリスはヘンリーに渡された青眼のカードのほかにカードを三枚持っていた。ひとつは封印された青眼を呼び出すための罠はずしのカード。もうひとつはヘンリーを深い眠りに落とすために枕元においてきた眠りのカード。そしてもうひとつは。
「青眼、お別れだ」
主従の契約を解くカード。
それこそがクリスの最後の望みだった。
自分と深くつながりすぎた青眼は現在主人のクリスにかけられた呪いも半分その身に引き受けている。だからこそクリスはここまで耐えることができたのだが、このまま遠からずクリスが死ねばこの唯一の青眼龍も死ぬ可能性が高かった。クリスはそれがたまらなかったのだ。
誰かのものになるかもしれないけれど、この自分の、死に際の王にかけられた妄執のような呪いに引きずられて死ぬのはあんまりだ。
だから。
キュウ、と青眼が声を上げた。クリス自身も呪いを受けているからわかる、その身は相当痛んでいる。それでも青眼は身をよじってクリスを包み込むように舞い降りた。顔を近づけて訴える。どうか契約を解除などしないでくれ、と。
大きな青い目が出会ったときと同じようにクリスのそれをのぞきこんだ。クリスはそっと手を伸ばし、頭を撫でる。
「すまない、イブリース・・・だが、このままではお前もこの世にいられなくなってしまう。戦いで死ぬのなら、それもいいかもしれないが、この穢れた身に一緒にいる必要などないのだ」
青眼は必死に首を振る。言葉が通じないことをもどかしく思う。主と一緒にいられないのなら、何の意味もないのだと伝えたかった。クリスこそが青眼の唯一の主であり、クリスがいるからこそ人の世に呼び出されて戦うのだと。
漸く見つけた、最上の主をまた青眼は失ってしまう。
「キュウゥ・・・」
だが、クリスは最後に持っていたカードを取り出した。その目からは愛する僕との別れに涙があふれていた。青眼もますますその身をよじり、首を振って拒絶しながらもクリスから目を離そうとはしない。青眼の目からも次から次へと涙が溢れて止まらなかった。
「さらばだ、イブリース」
きっとクリスは青眼白龍との契約を解けば、その呪いの負荷に耐えられずにすぐに死に至るだろう。しかし青眼を解放できるのなら、それでもよい。だが青眼との別れは身を切るように辛く、悲しかった。
俺を許してくれ、と泣きながら囁くとクリスはカードを発動した。
「契約・・・解除」
光が台地に溢れた。



to be continued...

*****

2007/10/15
キャラも捏造中。BGMは「私とワルツを」はいかがでしょうか。
青眼大好きです。