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the silence of "S"
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雪の降るホグワーツ、その校内では授業時間であるためか、はたまたいよいよ吹雪に近くなっていた天候のせいか、動くものはいなかった。
窓の外の白と黒の世界など知らぬげに、校長室で黒衣を身にまとった男が書類にサインをしていた。
その筆運びには全く無駄がなく、淡々とサインをしつつも目はしっかりと内容をチェックしている。
また一つのサインを終え、ようやく羽ペンは壷に戻された。
乾ききらない黒いサインは、ホグワーツ魔法学校校長のセブルス・スネイプ、と読めた。男―セブルス・スネイプ校長―はため息をつく。書類仕事は終わったようだった。
スネイプは教授であった頃と変わらない陰鬱な顔と眉間に寄せたしわを崩さないまま部屋を見渡した。
歴代校長の肖像画に目線がいったとき、彼はほとんどわからないほど僅かに顔をしかめた。
「・・・」
アルバス・ダンブルドアは生前と変わらぬ茶目っ気のある微笑をたたえて彼を見返していた。
目をそらしたのはスネイプの方が先だった。
頭を巡らせ、ふと窓の外を見る。雪は勢いよく降り続けていた。風音以外に聞こえてくる音はない。
・・・あのハリー・ポッターがホグワーツにいないというだけで、こんなにもここは静かだ。
ハリーだけのせいではないが、彼がホグワーツにおいておこる騒動のほとんどに関わっていたのは周知の事実だった。
今のこれが嵐の前の静けさであることも。
もうすぐ・・・本当にあともう少しで、多くの魔法使いの―生徒をも含めて―血が流されるだろう。校長として、スネイプはすでにやるべきことはやっている。それでもここにいない者たちはどうしようもない。彼らはもはやこの手を離れたのだ。
大の大人ですら、自らの運命に立ち向かってゆく勇気を持つものは少ない。傷つき、痛み、悲鳴を上げながらも必死に運命と戦う姿が目に浮かぶようだ。
校長はひとり唇を引き結んでサインを見つめた。目を閉じ、そう遠くない未来を想像する。
そうして自らに問う。
そのとき、自分は何を為すだろうか。
そのとき、彼は何を選ぶだろうか。
きちんと最良の未来を選んでくれるだろうか。
その答えはまだ誰も知らない。
もう・・・終わりにしたいのだ、いいかげん。
現校長のため息を聞いたものは歴代校長の肖像画だけだった。
fin.
07/07/27
現在7巻の15章まで読んで書きなぐったもの。ハリー視点のためこんな描写はぜんぜん出てきません、妄想です。セブルス・スネイプ校長。なんかいい。
でもやっぱホグワーツの校長はダンブルドアでないと・・・
スネイプがなんだかんだと生徒を護ろうとしていると尚良い。もし今年ハリーらがホグワーツに通ってたらどうしたんだろな。
タイトルの"S"はいろいろ意味を掛けてます。
Examle..."S"evrus, snow, scar, sanctuary, school, sadness, and sacrifice.
--セブルス、雪、傷、聖域、学校、悲しみ、犠牲者。