半端じゃない白百合の花束を贈られた。
白百合
――White atack――
「どうしたの、ソレ」
工藤邸を訪ねてきた哀は、白百合の大群を見てためいきをついた。
「…言わなくてもわかるだろ…」
「…聞かなくてもわかるわ…」
むすっとした顔で花を活け続ける新一が、これまたためいきをつく。
そう、彼らの間ではまったく同じ人物が脳裏に浮かべられていた。
平成のルパン、月下の奇術師こと天下の大怪盗。
(余談だが、管理人のPCでは打つと「天下の大回答」と変換されて笑えた)
彼ぐらいしかこんなことをする人物に覚えはない。
花くらいは新一だってよく贈られるし、(新一は不本意だが)慣れている。
けれどこの量は…半端じゃなかった。
部屋が花で埋っている。
そのなかにたたずむ自分たちの姿は、花畑に立ちつくす異分子、といったところで。
「なんかだんだん増えてる感じすらするんだよ…」
もう乾燥ワカメみたいな勢いで。
ぼやく声にもなんだか覇気がない。
「こまったものね」
哀も相槌をうつが、どことなく呆れというか、そんな口調だった。
てゆうか、彼ならできる気がする。
百合を際限なく増やし続けさせることを。
…やりそう。
いつもたいした意味もなく、ただ『驚かせたかったから』なんていう理由でとんでもないことをやる人物である。
確かに驚いた。驚いたが…
いまや新一にはやるせない怒りととめどない疲労感しか残っていなかった。
落とした肩の辺りにそんな感情が漂っているのが見える気がする。
花に罪はないが、これから先、白い百合を見るたびにこの疲労感を感じるだろうと彼は思った。
「…工藤くん、コーヒーでも飲む?」
「…ああ。ぜひそうさせてくれ」
なんで俺は志保に癒しを感じてるんだろう? 志保なのに。←笑
でもまあいいや。何でもいいからこれのことは忘れていたい。
現実逃避に走った新一は哀と工藤邸を後にした。
やがて癒されて復活した新一がこの逆襲をたくらみ、哀とともに暗躍するのはまた後日。
(05/07/05)
これは黒薔薇の逆襲編へとつながっております。
なんとなく小話を作りたくなって書きました。短いですね、はい。
白い人が花を贈ったのは単純に「そうだ、花を贈ろう!」と思いついたからです。それだけです。(←迷惑な)