ごちそうさま
「服部ってさ」
唐突に、東の名探偵こと工藤新一は会話を始めた。
「なんやねん」
食べていたラーメンをのみ込んで、西の名探偵、服部平次は新一を見る。
頬杖をつき、じっと平次の顔を見つめる新一は人を無自覚に惹き付ける美貌の持ち主だ。
対する服部も人好きのする笑顔に男性的で整った顔立ち。
そんな二人は普通のラーメン屋内で非常に注目を浴びていた。
その二人の会話。
「服部ってさ、なんでそんなに黒いわけ?」
「なんでって…(汗)生まれつきや。しゃーないやろ?」
…工藤新一はなかなか爆弾発言を投げ落とす男である。
「だってさ…お前爺さん譲りだっていってたけどいくらなんでも黒すぎるだろ?!」
「いや、そんな力説されても…。ま、まあ日焼けとかもあるんちゃうか? 冬になったら少し色薄うなるし」
「なんのかッ?!」
驚きの新事実である。
「まあ、少しはな。…あ、その目は疑うとるやろ」
「あったりめーだろ。ただでさえ俺とお前が並ぶと、『白黒コンビ』とかゆー新人漫才師みたいな呼ばれ方されてさ。いい迷惑だぜ、んっとに」
新一にとって、以前雑誌にそのフレーズとともに写真付きで載ったことがいたくお気に召さなかったらしい。因みに白馬と並べば『王子と姫』的扱いを受けるので新一はできるかぎり彼を遠ざける作戦に出ている。…報われない白馬探偵。
「俺のせいやないって! しっかし工藤も白すぎやで?」
「うるせー白いってゆうな。いくらやけようと思ってもやけねーんだよ。別にやけたくもないけど」
「お前の黒い姿、なんや想像もつかへんわ」
「俺もお前の白い姿なんて想像できねー」
言い合って二人はラーメンをすする。なぜか沈黙が流れた。
そして再び話を蒸し返す東の名探偵。
「そういや俺、お前の第一印象最悪だったぜ」
「えーなんやそれ…。ちょっと傷付くわ」
「まず『黒ッ』て思ったもん」
「………」
「おまけにいろいろ気に障ること言いやがるし。俺は覗きじゃねーっての」
「せやから、もう謝ったやんけ。あれはそう思われてもしゃーない状況やったし」
「さんざん俺をガキ扱いしやがるしさー」
平次はさらにぶちぶちと愚痴っている新一に違和感を覚えた。
普段新一はこういったことをいうやつではない。何か理由があってこの話をしているのだろうか…?
探偵としての勘がなにかある、と告げていた。
平次が推理に入ろうかというそのとき、
「そういうわけで、ヨロシク」
ぽん、と肩をたたかれた。
「? 何が?」
聞き返すと新一は、俺の話、聞いてなかったのかよ? と言いながら軽くにらみつけてきた。
思わず、
(かわえー…)
と思ってしまった平次に罪はない。
「俺はほら、今までにもいろいろあったじゃん? ごくろうさん、てなかんじで」
「?」
「ここの勘定、よろしくな?」
「…! なんでやねん、くど…」
あわてて抗議する平次をさえぎり、母親譲りの美貌を誇る東の名探偵、工藤新一はにっこりと満面の笑みを浮かべた。
「服部」
固まってしまった平次はただただ新一の顔を見つめることしかできない。
新一の形よい唇が動き、涼やかな声音を発した。
「ごちそーさん」
「いろいろあってご苦労さんて…、何年前の話やねん! ちょお工藤!」
ようやく硬直から脱した平次がさけびだすが、結局、この時折確信犯になる東の名探偵にはかなわないのである。
はすっかいにだが新一の笑顔を目撃した客が、ラーメンがのびるのにも気づかずに硬直していたというのも、彼にとってはよくある話。
end 04,03,09
え、ここって快新サイト? とかゆってはいけません。
てか初アップに平次と新一(名前のみ白馬)しかでてこないって…どうよ。(なげやり)
これおもいついたのはふとんにはいってすぐです。
制作時間すごい短いです。
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