ご褒美にお菓子?

















「…くそ」

誰もが晴れやかな気分になるであろう青空に向かい、工藤新一は忌々しげに毒付いた。

「こんなに晴れてちゃ…」


「あら、誰か来るのかしら?」

きちまうじゃねーか、と。
口にだす前に、隣の某天才科学者の少女が新一の言葉を先に言い放った。

「…は、灰原」

「おはよう、工藤くん」

「……おはよう」

工藤邸の門の前。
隣人の阿笠博士と共に暮らす灰原哀が、小学校の赤いランドセルを背負い、そこに立っていた。


はたから見れば和やかな朝の挨拶を交した彼らだったが、その実情は、

「あなた最近白い鳥あたりにストーキングでもされているのかしら?」

「ストーキング…汗」

尋問官と尋問されている被害者(違)といったところだろうか。




彼女は彼に危害を与えるものには容赦しない主義である。

それ故に先ほどの発言へと繋がるわけだが、何故こうも勘がよろしいのか。

新一は内心でこっそりと溜め息をついた。


「別に…まあストーカーっちゃそうだな」

ありゃストーカーっつーより嫌がらせか?などと呟く新一を哀は冷めた目で眺めた。


彼女はもちろん工藤邸の庭から覗きをしている白い存在(笑)を知っていた。
(そして内緒だがその光景は阿笠家から丸見えである)

その理由もだいたいの予想はついている。



それでも彼女は敢えて新一に尋ねた。

「で。」

「で、って…?」

ちょっと尋問にびびった顔をしながら新一が尋ね返す。

「今度はあなた、何をしたの?」

「なにしたって…。なにしたんだろーなー…」

一瞬不満気にむっとした声をだした新一だったが、すぐに遠い目をして首を傾げた。


新一にしてみれば。
この前久しぶりに現場に行ったとき、中継地点を訪れた新一に突然怪盗が文句を言い出したとしか認識されていない。
いわく、
が足りない!』

新一がしごく真面目に、
なにいってんだ、お前
と返すと、よよよ、と泣き真似まで始める始末。

しまいには『こーなったらガンガンいくからな!!』
だのと叫びながらハングライダーで飛び去っていった。
あとに残された新一のポケットにいつのまにやら盗んだ宝石が入っていたのはさすがとして。


半ば呆然と。
『変なやつだ…』
新一はビルの屋上の嵐をそう評した。





そしてその次の予告の日から、どこにいようと予告状が一時間おきに届けられるようになった。
しかもすべて違うバージョンの暗号つき。
脊椎反射で新一が暗号をとけば、怪盗の気障なセリフが浮かび上がってくる。

行けば生きた気障怪盗に会わなければいけないし、
行かなければ実物が工藤邸へと舞い降りてくるのだ。


とどのつまり、予告のたびに行こうが行くまいが、嫌でも会わなければいけなくなったということで。



大変迷惑な話である。



そして口を開けば『好きです』だの『付き合ってください』だの、適当に流していたがうるさくって仕方ない…。













「…と、いうわけなんだよな」

やっぱあいつは変なやつだよな、灰原、とか言ってる新一の顔を哀は半ば呆れ、しみじみと見つめた。



「中学生じゃあるまいしなあ…」

ぼそっと呟かれた言葉に、哀はぴくりと眉をあげ―――にやりと笑った。


怪盗は哀れだが…これは少々面白いかも知れない。
丁度退屈してたし。


「工藤くん?」

「ん〜なんだ灰原」

交す笑みは同じ悪戯を思い付いた共犯者のもの。


「今日はまとも相手してあげたら? それでこう言うの。」



爽やかに晴れわたる空の下、
その日道路の真ん中で、
小学生の姿の哀が合わせてかがみこんだ名探偵工藤新一の耳に、なにかを囁く光景が見られたとか。



工藤邸に白い影が降り立つまで、あと半日。














                                          (04,04,12)




ん〜よくあるネタですが、よくあるだけに挑戦してみたくなりました。
新一くんと哀ちゃんに遊ばれるキッドさま!!
いいです。すきです。
とゆーわけで続きます♪



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