「………」

窓の外にへばりつく、白い物体を認識して。
新一はしばし脳活動・体活動を停止した。



       押してだめなら更に押してみろ。













「ふう。死ぬかと思ったよ。」
「こんな台風の日に予告出す馬鹿がわるいんだろ」

そう、今は季節外れの台風が来ていて、暴風警報の発令された東都付近ではみんな軒並み家にいるはずの日であった。
そんな日に予告をだして、しかもそれを実行してきたというのだろうか。
台風だろうが休めない警察の皆さんが気の毒だ。
新一が密かに同情の溜め息を漏らしていると、怪盗が自然な動作で部屋に入り込もうとしていた。
「ってコラ。なに不法侵入しようとしてやがる。しかも俺の目の前で」
「気にしないで下さい。貴方と私の仲ではありませんか」
(どんな仲だよ)
とは思ったが、土砂降りの雨の中を飛んで来たらしい彼からは滴がぽたり、ぽたりと垂れており、むしろ新一はその辺においてある本が気になった。
「…。おまえ濡れてるだろ。そんなかっこで入ってくんなよな」
ほら拭け、とばかりに投げよこされたタオルに、天下の怪盗KIDは心底嬉しそうな顔をする。形容するなら『にたー』という感じで。
いきなり崩された怪盗のポーカーフェイスに新一は激しく動揺した。
「甘いねえ、名探偵。そういうとこも好きvv」
そして続く発言に完全に新一は思考停止状態においこまれた。
怪盗KIDは…KIDは…こんなふざけてアホみたいな意味不明のキャラクタ−だっただろうか? 答えは、否。
「……………………。お前、KIDじゃないな?!」
「はっ?? やだなー、正真正銘怪盗KIDだって」
突然の発言に面食らってKIDが新一の方を見ると、新一は頭痛がするのか頭を抱えていた。
「なにが『めーたんてー』だ! ふざけるのもたいがいにしろよ?!」
「怒った顔もかわいーなあ…」
「ひとのはなしをきけ」
「まあまあ。そだ、コーヒー飲む?」
「だれが飲むかッ!」


十数分後。
…とりあえずリビングでコーヒーを飲むことになりました。


   ***** This is dawn of the fight of love. *****


強引かつ強運な怪盗と、押しに弱くて不運な名探偵。

彼らの戦いは始まったばかりである。








2004/12/18
いやあ、なつかしいものがでてきたので思わず発掘。
ファイル名からするに、6月21日ようのものだったらしいです。
(ぜんぜん覚えてないけど…)